「ハナミズキ」は、日本のシンガーソングライターの一青 窈(ひとと よう、台灣名:顏 窈〔がん  よう:イェン・ヤオ〕1976年9月20日 - )が自身5枚目のシングルとして2004年2月11日に発表した楽曲です。
 2010年8月には、この楽曲のイメージを実写化した映画が公開されて、興行収入27億円を超える大ヒットとなっています。

 

 一青 窈は台湾生まれで、台湾人の父親の顏恵民(がん けいみん:イェン・フイミン、1928年 - 1985年)の姓を引き継いで「顏 窈(がん よう:イェン・ヤオ)」と名付けられました。
 幼稚園卒園後に父親を台湾に残し、日本人の母親・姉と日本で生活することとなりました。
 小学校2年生の時に父親が肺癌で死去してからは、母親の姓の一青(ひとと)を名乗っています。
 「一青」とは、珍しい姓ですが、母親の出身地石川県発祥の名字で、石川県鹿島郡に地名としても存在します。(鹿島郡鳥屋町一青、2005年3月1日からは鹿島郡中能登町一青)
 その母親も、一青 窈が高校生の時に癌で亡くなっています。

 

 なお、一青窈の国籍については、彼女が生まれた1976年当時の日本の国籍法は「父系優先血統主義」を採っていたので日本の国籍は取得できず、「父母両系血統主義」を採っていた台灣(中華民国)の国籍になり、台灣の戸籍に「顏窈」と名付けて記載されていた筈です。
 1984年の日本の国籍法改正で、日本も「父母両系血統主義」になったので、その後日本国籍を取得して日本の戸籍に「一青窈」と名付けて届け出て、当面二重国籍になっていたものと思われます。
 その後、台灣で国籍離脱の手続きをして「国籍喪失許可証書」を取得していなければ、今でも二重国籍状態ですが、嘗ては国会議員でも蓮舫(れんほう)のように台湾との二重国籍の者もいたくらいなもので大した問題ではないでしょう。

 

 父親は台灣新北市に位置する山間の町九份(きゅうふん、チウフェン)の金鉱経営で成功し台湾の5大財閥に数えられた顏一族の長男でしたので、一青 窈も経済的には恵まれていたようです。
 しかしながら、両親共に早世したため家庭的には寂しかったようで、そのことが作風にも少なからず影響しています。

 

 「ハナミズキ」の歌詞は、詞語そのものは小学生にも解る平易なものですが、それらを組み合わせた各句や節は、省略が多く包括的で文意を掴みにくい難解なものです。

 

 この歌詞を読み解くヒントは、歌詞の創作背景にあります。
 一青はこの詞を、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の発生直後、二ューヨークにいた友人からのメールをきっかけに、一週間ほどで書き上げました。
 作詞当時は、A4用紙3枚にも及ぶ長いもので、その内容は「テロ」・「散弾銃」といった詞語を羅列してテロリストへの怒りを詠ずる、一青本人の言によれば「挑戦的な詞」であったといいます。
 その後、2年半の間に推敲を重ねて詞語を削り、「君と好きな人が百年続きますように」の言葉にたどり着いた時には、最早テロリストへの恨みの詞ではなく、犠牲者の立場で残された家族への祝福のメッセージへと昇華していました。

 

 詞題の「ハナミズキ」は、多発テロとは無関係で、一青が慶応義塾大学の学生であった頃、しばしば訪れた東京都世田谷区の二子玉川にあるレストランやファッション雑貨の店などの入った商業ビル「ドッグウッドプラザ」に因んでいます。
 「ドッグウッド」とは英語でハナミズキの意であり、この店舗名が付けられたのは、二子玉川のシンボルの花とされているのがハナミズキであったことによります。

 

 ハナミズキは、 一青 窈の青春時代を彩っていた思い出の花なのです。
 楽曲「ハナミズキ」の歌詞は、包括的で詞的な表現で貫かれていますので、解釈を一つに限定することは不可能ですが、前述のとおり決して失恋の歌ではありません。

 

 伊賀山人個人としては、この歌詞は、本旨としては不慮の死を遂げた人が残された幼子の「百年の幸福」を祈っているものであり、それは一青 窈の幼い頃に死別した父親が娘を思う心情と一青 窈が母親を懐かしむ思いなど様々な想念を複合的に重ね合わせたものと解釈しています。
 ここで、「百年」の詞語は、「人生五十年」のイメージを持つ日本人にとっては大袈裟に聞こえるかもしれませんが、古来漢文化圏では「人生百年」と言い習わしており、「百年」とは「一生」或いは「生涯」と同義です。

 

 なお、緑字で付記した台灣國語歌詞は一青 窈自身が翻案して新たに作詞したもので、納得できるものを書くのに10年かかったと語っています。

 

 蛇足ながら、一青 窈の父系顏一族の先祖は、唐代の政治家・書家で当代随一の学者・芸術家として世に知られている顏 真卿(がん しんけい、 709年 - 785年)です。
 更にその先祖を遡ると、今から2500年前に孔子(こうし)の後継者と目されながら惜しくも孔子に先立って早逝した稀代の秀才  顏 回(がん かい)に行きつく古き名門です。

 

 

ハナミズキ(花水木)
四照花

             作詞・作曲・演唱: 一青窈
             台灣國語翻譯歌詞: 一青窈

 

空を押し上げて
手を伸ばす君 五月のこと
どうか来てほしい
水際まで来てほしい
つぼみをあげよう
庭のハナミズキ

無意間 伸出了雙手
回憶五月那天擁抱天空的往事
喜歡你走到我身邊
靜靜的慢慢走到這水邊
送你一朵待放的花
那是園裡的四照花

 

薄紅色の可愛い君のね
果てない夢がちゃんと
終わりますように
君と好きな人が
百年続きますように

我衷心地祈禱 美麗夢想能夠實現
祝福淡紅可愛的你和他
我衷心地祈禱 美夢成真的那一天
願你和心上人 百年好合

 

夏は暑過ぎて
僕から気持ちは重すぎて
一緒にわたるには
きっと船が沈んじゃう
どうぞゆきなさい
お先にゆきなさい

這夏天有些太炎熱
然而我對你的關愛又太過沉重
想和你一起到彼岸
但我知道小船會顛覆沉沒
所以請你一個人走吧
離開我安心的走吧

 

僕の我慢がいつか実を結び
果てない波がちゃんと
止まりますように
君とすきな人が
百年続きますように

我衷心地祈禱 雨過之後會有天晴
你們幸福相守 永世不渝
我衷心地祈禱 這世界風平浪靜
願你和心上人百年好合

 

ひらり蝶々を
追いかけて白い帆を揚げて
母の日になれば
ミズキの葉、贈って下さい
待たなくてもいいよ
知らなくてもいい

揚起了白色的風帆
輕輕地追趕飛舞在眼前的蝴蝶
母親節的那一天
獻給媽媽一片四照花的葉
沒關係 不用等我
不需要 知道太多

 

薄紅色の可愛い君のね
果てない夢がちゃんと
終わりますように
君と好きな人が
百年続きますように

我衷心地祈禱 美麗夢想能夠實現
祝福淡紅可愛的你和他
我衷心地祈禱 美夢成真的那一天
願你和心上人 百年好合

 

僕の我慢がいつか実を結び
果てない波がちゃんと
止まりますように
君とすきな人が
百年続きますように

我衷心地祈禱 雨過之後會有天晴
你們幸福相守 永世不渝
我衷心地祈禱 這世界風平浪靜
願你和心上人 百年好合

 

君とすきな人が
百年続きますように

美夢成真的那一天
願你和心上人 百年好合

 

 


花水木(中譯)

 

 

 おまけ:〔父母の思い出を語り「ハナミズキ」の漢訳版を披露する一青窈〕

台日混血歌姬一青窈 中文說唱樣樣行(20160901

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