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2020/08/04 14:40

 

 「時代」(じだい)は、日本のシンガーソングライター中島 みゆき(なかじま みゆき、本名:中島 美雪(読みは同じ)、1952年2月23日 - )が1975年9月25日にレコードデビューした翌月の1975年10月12日に発表し、同1975年12月21日に自身2枚目のシングルレコードとして発売した楽曲です。

 

 中島みゆきの独特な作風と個性的な歌唱法は、デビューから45年を経た現在でも幅広い年齢層の支持を受けています。

 

 雑誌『ダ・ヴィンチ』2007年10月号の中島みゆき大特集によると、彼女は自らの歌作りについて、「トレンドを追う情報収集のようなことは自分にはできない。私に何ができるのかというと早さより遅さであり、先を急ぐ人たちは、たいてい何かを落としてしまうので、自分は笊(ざる)を持って、それを拾っていこうかなと考えている」と語っています。

 

 その言のとおり、彼女の詞作には時代の最先端を行き脚光を浴びる強者を直接的に応援するようなものはなく、どちらかというと時代に乗り遅れた日陰者の弱者にそっと寄り添い間接的にそれとなく応援するような作品が多く見られます。また、巧みな比喩表現と主語の省略による包括的かつ抽象的な表現に特徴があり、聞く人それぞれの立場や境遇に応じた解釈ができる深遠さが、世代を超えて支持される理由の一つにもなっています。
 曲については、音域がそれほど広くはないので、素人でもカラオケで十分歌えますが、楽譜を見ると、三連符や転調を多用し場合によっては#が5個も付くロ長調を使用するなど非常に技巧的なものになっており、正確に歌いこなすのは職業歌手でも難しいものになっています。
 音域は、彼女自身が「コントラアルト」(contralto:コントラルト又アルト)と標榜しているとおり、女声としては低い方で、高音で絶叫するような歌唱法が主流の現在、珍しい存在になっています。彼女の歌唱法は、基本的にはアルトの声で朗々と歌い上げるものですが、曲調や詞想に応じて幾つかの声色を使い分けており、場合によっては1曲の中でも声色が変化していることが多々有ります。
 ラジオ番組などで話している声を聞くと、アニメのキャラクターのような高音の声で、歌唱とのギャップが大きく、初めて聞いたときはとても中島本人とは思えませんでした。

 

 普段の彼女は、巧まざるユーモアの持ち主で、2009年11月3日、長年の音楽活動の功績により紫綬褒章を受章した際のインタビューでは、「 思いがけずうれしいことの表現に『棚からボタ餅』と申しますが、今の私の気持ちは『棚から本マグロ』くらいの驚きでございます。ふつう、何かを頂けそうな場合には二度くらいは辞退して、それでもとおっしゃるならちょうだいするのがマナーなのでございましょうが、褒章となりますと『ふつう』ではないことですので、辞退なんかしたら二度とこんな機会はないかもと思いまして、即座に『いただきます!』と、お返事してしまいました。」とコメントしています。

 

 歌手の紹介が長くなりましたが、今回ご紹介する「時代」(じだい)は、中島みゆきが作詞・作曲した楽曲で、1975年10月12日のヤマハ音楽振興会主催の『第10回ポピュラーソングコンテストつま恋本選会』と同年1975年11月16日の『第6回世界歌謡祭』で演唱してグランプリを受賞し、その直後の12月21日にシングルレコードを発売して、20万枚を売り上げるヒット作品となりました。
 その後、学校の卒業式で歌われたり、音楽の教科書に掲載されたりして親しまれ、2007年に「日本の歌百選」にも選ばれています。
 2010年にはフジテレビ開局50周年記念ドラマ『わが家の歴史』のエンディングテーマとしても用いられています。

 

 曲は元々四分の四拍子ですが、三連符が多用されていることから、八分の十二拍子に書き換えられた楽譜が多く存在します。この際、四拍子の時の八分音符が十二拍子でも付点を付けずそのまま記載されていますので、両者の縦は微妙に異なることになり譜面どおりに演唱するとリズムがやや異なるものになります。
 歌詞の大意は、「悪い時代がいつまでも続きはしない。今は別れた恋人たちもまた巡り合うことが有る。今は倒れた旅人達もまた歩き出せるようになる。」と詠じるもので、そのような絶望の淵にある人々に声高に頑張れとは言わずに、それとなく応援するものになっています。
 この歌詞には、一人称・二人称の主語は書かれていませんので、歌いだしで悲しみの底にいる人は、歌い手自身とも聞き手の方とも解釈できます。
 詞中に見える「時代はまわる」「時代はめぐる」との表現は、「時代は目まぐるしく変化する」とも、「季節が巡るように悪い時代と良い時代は繰り返し訪れる」とも解釈し得る深遠なものです。
 また、「生まれ変わって」の一句は、語義のとおりであれば死後のことに言及しているようにも見えますが、彼女の作風から考えると、これも比喩表現としての暗喩であり、直喩としては「生まれ変わったように」と解釈すべきでしょう。

 

 高度経済成長期に、時代の先端を肩で風を切って走り抜ける人々の後ろの方で、彼らが目もくれずに落としていった弱者への共感や思いやりを拾い集めようとして書き上げた、中島みゆき23歳の折の作品です。

 

 

 時代
 時代

                   中島みゆき作詞・作曲・演唱

 

今はこんなに悲しくて
涙もかれ果てて
もう二度と笑顔には
なれそうもないけど

如今內心感到 如此的悲哀
淚水流盡 無法哭出來
已經再向往日的笑容
好像不能返回,不過

 

(間奏)

 

そんな時代もあったねと
いつか話せる日が来るわ
あんな時代もあったねと
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう
まわるまわるよ 時代はまわる
喜び悲しみ繰り返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わって めぐりあうよ

“也有過這樣的時候啊”
會有那麼一天 終於可以講出來
“也有過那樣的時候啊”
一定會有一天 能夠笑著講出來
所以吧 今天你就別再煩惱
被今天的風吹吧
流轉 流轉 時代總在流轉  
喜悲 悲喜 永遠重複
在今天分手的戀人們啊
也終究能夠擺脫過去 邂逅新的相逢吧  

 

旅を続ける人々は
いつか故郷に出会う日を
たとえ今夜は倒れても
きっと信じてドアを出る
たとえ今日は果てしもなく
冷たい雨が降っていても
めぐるめぐるよ 時代はめぐる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ

不斷走在旅路的遊子
總有一天也會遇見故鄉
就算今晚我倒下身軀
也要堅信有一天能再從這扇門走出去
就算今天等待我的是無休無止的
冷雨一場 我也不會懼怕和退縮
循環 循環 時代總在循環
別離 相遇 永遠重複   
在今天倒下的遊子們啊
也總會有洗心革面的一天 再度出發吧

 

(間奏)

 

まわるまわるよ 時代はまわる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって歩き出すよ

流轉 流轉 時代總在流轉 
分合離聚 不斷重複
今天跌倒的遊子們
一定能站起來 再次出發

 

今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ

今天跌倒的遊子們
一定能站起來 再次出發

 

 

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    伊賀山人 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()