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 クリスマス・エクスプレス'89(X'mas EXPRESS'89)とは、東海旅客鉄道(JR東海)が1989年 から1992年までテレビで放映していた東海道新幹線のCMシリーズ『クリスマス・エクスプレス』(X'mas Express・Xmas Express)の第1回目の作品です。

 

 1987年に国鉄分割民営化により発足したJR東海は、最初の企業広告として遠距離恋愛を題材にしたCMの第1作となる『シンデレラ・エクスプレス』を制作しました。
 このCMのコンセプトは、「新幹線は、人と人が出会い、町と町を結ぶコミュニケーションメディアである」というもので、その後のJR東海のCMもこのコンセプトを踏襲して、いわゆる「エクスプレス」シリーズといわれるイメージCMを展開しました。
 第2作の『アリスのエクスプレス』、第3作の『プレイバック・エクスプレス』、と引き続き、1988年(昭和63年)12月には、遠距離恋愛のカップルが新幹線でクリスマスに再会を果たすストーリーを描いた『ホームタウン・エクスプレス』を放映しています。
 この『ホームタウン・エクスプレス』は、『クリスマス・エクスプレス』の前身となったもので、この時から背景音楽には山下達郎の「クリスマス・イブ」が採用されるようになりました。

 

 このCMが放映されると、日本において「恋人同士でクリスマスを過ごす」という新たな文化が生まれるなどの社会現象を巻き起こし、以後1989年(平成元年)から1992年(平成4年)までの4年間に亘って『クリスマス・エクスプレス』と題するCMシリーズが制作されました。

 

 山下達郎の楽曲「クリスマス・イブ」は、1983年から季節限定シングルとして細々と販売されていたものでしたが、『ホームタウン・エクスプレス』に引き続き『クリスマス・エクスプレス』シリーズでもJR東海のCMで使用されたことから知名度が急上昇して、1989年にはオリコンチャートで30週目のランクインで初の1位を獲得し発売から1位獲得までの当時の最長記録(6年6か月)を更新、1991年1月にミリオンを突破、オリコン週間シングルランキングに30年連続記録でトップ100ランクイン(1987年-2016年)など、ロングヒットとなりました。

 

 今回ご紹介する(X'mas EXPRESS'89)は、「クリスマス・エクスプレス」シリーズの最初の作品で1989年に発表されたものです。
 このCMのあらすじは、「彼女が、クリスマスイブに故郷に帰ってくる彼の到着時間に遅れまいと、タクシー乗降場から新幹線の駅の改札口まで走り、改札口の彼を見つけると柱の陰で待ち伏せる」というストーリーです。

 

 主役の彼女役には、この年デビューしたばかりの新人女優で当時17歳の牧瀬里穂、彼氏役には、ファッションモデルとして活動中の22歳の長澤ユキオが出演しています。
 撮影場所は、名古屋駅構内(桜通口及び中央コンコース)で、最後に彼女が息をはずませるシーンは、実際に牧瀬里穂が駅構内を何回も走り息をはずませてから撮影したものです。

 

 キャッチフレーズは「ジングルベルを鳴らすのは帰ってくるあなたです」というもので、
60秒バージョン(短縮版の30秒もある。)がACC CMフェスティバルのグランプリを獲得しています。

 

 現在の若者の感覚では、何を慌てて改札口まで走らねばならないのか理解できないでしょうが、この理由は約30年前の時代背景によります。
 当時は、インターネットどころか携帯電話もない時代であり、待ち合わせには時刻と場所を特定しておく必要がありました。
 そして、一度家を出ると連絡手段は一切ないので、約束の場所に約束の時刻に行かなければ行き違いになる可能性が大きかったため、遅れそうになると走ってゆくのが常であったのです。
 また、当時は相手に、動画どころか静止画像も送ることはできず、写真を郵送する以外は遠隔地にいる相手の顔を見ることも出来なかったのです。
 再会には、現代とは全く異なる特別の感情が生ずるものでした。

 

 牧瀬理穂が、当時の乙女の胸のときめきを全身で表現したことが、万人の共感を得たのであります。

 

 JR東海は、1992年を最後に「クリスマス・エクスプレス」シリーズを休止していましたが、2000年(平成12年)に「Xmas Express2000」として、この年に限り復活させています。
 しかしながら、特に話題にもならなかったようで、その後は制作していません。
 携帯電話が普及し、WEBで動画などを手軽に送れる技術が発達したことにより、遠距離恋愛の「逢う前のときめきや逢えた時の達成感」が、殆どなくなったのが原因のようです。
 人は、何か便利なものを手に入れると、その代償として何か大事なものを失ってしまうもののようです。

 

 「クリスマス・エクスプレス'89」(X'mas EXPRESS'89)は、発表当時絶大な反響を得たことから、このパロディー版も数本発表されています。
 その中で、最も人口に膾炙したのは、1990年11月22日にフジテレビで放送された番組「とんねるずのみなさんのおかげです」の中で、牧瀬理穂が出演する『ゴースト タカの幻』と題するコントの直前に挿入されたパロディコントです。
 このパロディコントには、JR東海の本物のコントと同じく牧瀬理穂が主演して、彼氏役には日本のお笑いコンビである「とんねるず」の石橋貴明が出演しています。
 ストーリーは、彼女(牧瀬理穂)が駅構内を走るシーンやナレーションなど本物そっくりに作られています。
 違うのは、撮影場所が名古屋駅から東京駅(八重洲口)に変わったことと、、列車から降りてくる彼氏(石橋貴明)がきっぷを出さずに出口ではなく入口の改札から出ようとしてキセル乗車疑惑で駅員に捕まえられて大暴れするという内容になっていることです。
 動画の最後に「キセル乗車はやめましょう!!」のテロップが、JR東海のロゴマークとともに表示されています。
 このパロディーは、殆ど悪ふざけに等しいものですが、当時JR東海の全面的協力を得て作られたものでした。
 なお、JR東海は当時全国ネットだった同番組のスポンサーの中の一社であり、番組放送時にも本家クリスマス・エクスプレスのCMが流されたので、本物とパロディーの両方がこの番組で放映されるという珍しいことが起きています。
 現在では、著作権や企業イメージの保持などの観点から、このようなことは起りえないでしょう。
 古き良き時代の大らかな雰囲気を感ずるパロディーコントでした。

 

 今回は、本物とパロディーの双方をご紹介します。

 

 

 【JR東海 X'mas Express'89 牧瀬里穂】▼

いいなCM JR東海 X'mas Express 牧瀬里穂

 

 

 【とんねるず X'mas Express'89のパロディーコント 牧瀬里穂】▼

とんねるず あのCMのパロディ

 

 

 

クリスマスイブ(Christmas Eve)
聖誕夜

          作詞・作曲・演唱:山下達郎 
雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう
Silent night, Holy night
きっと君は来ない
ひとりきりのクリスマス・イブ
Silent night, Holy night

雨水過了深夜 
就會化成雪花了吧
這沉靜的夜晚 神聖的夜晚
妳一定不會來了吧 
獨自一個人的聖誕夜
這沉靜的夜 神聖的夜

 

心深く 秘めた想い
叶えられそうもない
必ず今夜なら
言えそうな気がした
Silent night, Holy night

內心深處裏 隱藏的秘密 
那是不會被實現的
一定是在今晚 
感覺到可以說出口
這安靜的夜 神聖的夜

 

まだ消え残る 君への想い
夜へと降り続く
街角にはクリスマス・ツリ-
銀色のきらめき
Silent night, Holy night

還沒有消失掉的對妳的思念 
向黑夜裡慢慢的飄落
街角的聖誕樹 
閃爍著銀色的光芒
這沉靜的夜 這神聖的夜

 

雨は夜更け過ぎに
雪へと変わるだろう
Silent night, Holy night
きっと君は来ない
ひとりきりのクリスマス・イブ
Silent night, Holy night

雨水過了深夜
就會化成雪花了吧
這沉靜的夜晚 神聖的夜晚
妳一定不會來了吧 
獨自一個人的聖誕夜
這沉靜的夜 神聖的夜

 

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    伊賀山人 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()