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 「テネシーワルツ」(Tennessee Waltz,The Tennessee Waltz)は、1946年にピー・ウィー・キングが作曲した曲に、レッド・スチュワートが詞をつけた楽曲で、1948年1月にゴールデン・ウエスト・カウボーイズが発表し、その直後の3月には元ゴールデン・ウエスト・カウボーイズのメンバーであったカウボーイ・コパズがカバーして、いずれもヒットチャート上位を獲得しました。

 

 その2年後の1950年になってパティ・ペイジ(Patti Page、本名:Clara Ann Fowler、1927年11月8日 - 2013年1月1日)が一人三重唱でカバーしたものが600万枚を売り上げる大ヒットとなりました。
 1965年にテネシー州はこの曲を公式に第4の州歌としています。

 

 パティ・ペイジはアメリカ合衆国オクラホマ州の出身で、本名はクララ・アン・フォウラーといいます。
 クララは18歳の時、地元の高校を卒業して実家の近くにあるラジオ局に事務員として就職しました。

 

 当時このラジオ局の15分番組で、「パティーという名の少女が旅をしながら行く先々で歌を歌う」という趣向の番組が放送されていました。
 主役のパティーを演じて歌を歌っていたのは、勿論プロの女歌手でしたが、偶々この歌手が急病を発症して番組に出られないという事態が発生しました。
 当然ながら、当時の放送は生放送ですので、慌てたプロデューサーが急遽局内で代役にできる女子を探したところ、声が好く歌の上手い新入社員のクララに白羽の矢が立ちました。
 主役である以上、芸名が必要でしたが、余りにも突然のことで何も考えていなかったクララは、役名の「パティー」とこの番組のスポンサー名の「ペイジ乳業株式会社」を組み合わせて、「パティ・ペイジ」という間に合わせの芸名を名乗ることにしました。
 その後、60年以上に亘って終生歌手活動を続け数多くのヒット曲に恵まれて、誰からも敬愛されるアメリカを代表する国民的歌手に成長するパティ・ペイジ誕生の瞬間でした。

 

 これを契機にプロ歌手としてデビューしたパティ・ペイジは、1948年に「Confess」というデュエット曲を発表しますが、他の歌手を起用するだけの予算が不足していたパティは、一人で二人分のパートを二重録音してレコードを完成しました。
 このやり方が気に入ったパティは、その後も一人で二重唱から四重唱に至るまでの多重録音の楽曲を発表しましたが、目新しさも手伝って多くの曲がヒットしました。

 

 中でも、今回ご紹介する一人三重唱の「テネシーワルツ」は、カバー曲であるにも拘らず、原唱を遙かに凌ぐマルチミリオンヒットとなりました。

 

 なお、この楽曲は元々、男が歌う男の曲です。
 男の曲としての歌詞の内容は、「恋人(女)とテネシーワルツを踊っていたら、偶々古い友達(男)に再会した。そこで、自分の恋人を紹介したら、なんと、その友達に恋人を盗まれてしまった。」というようなものです。
 しかしながら、原唱のカウボーイズらの歌い方には、じめじめしたものはなく、「いや~あいつにしてやられたよ~ ハッハッハ~」と明るく笑い飛ばすような歌い方です。
 これは、現在でもハンク・ウィリアムズ・ジュニアなど男歌手がカバーする時には同様です。

 

 パティは、これを女の歌に変更して、悲しみと寂しさとを詠ずるアレンジにしています。
 蛇足ながら、日本では男の歌を女が、或いはその逆に女の歌を男がそのまま歌うこともよくありますが、アメリカではそのようなことは滅多にありません。
 英語には男言葉、女言葉の別はありませんので、歌詞の性別を変えるのは簡単です。
 この「テネシーワルツ」では、「古い友達」を表わす代名詞の「him」を「her」に変えるだけで片付けています。
 そのため、男である恋人を「my little(小さく可愛い) darling」と表現するような不自然さは残っています。

 

 また、この楽曲の特徴は、一風変わった「歌中歌」の形式をとっていることです。
 即ち、第一句目で主人公は、バックで演奏されている「テネシーワルツ」の曲に合わせて踊っていることになっていますが、後にも先にも世界中で「テネシーワルツ」という題名の曲はこの一曲だけです。
 つまり、未だ発表されていない曲に合わせて踊っていることになります。
 しかも、主人公は、バックの未発表曲と全く同じ体験をしていることになるという、どう考えても不思議な構成になっています。

 

 「絹の声」と評されたパティ・ペイジ、歌手生活60有余年を経て「麻の声」になるまで、何度も何度もこの楽曲をセルフカバーしていますが、今回は、初出から約10年後の録音でご紹介します。
 初出との変更点は、モノラルからステレオになったことと、詞句の一部「I introduced her to my loved one」の主語「I」を省略して演唱していることです。

 

 アメリカが生んだ国民的大歌手のパティ・ペイジ、6年前の元日に85歳の天寿を全うしました。

 

 

 Tennessee Waltz
                                      Patti Page
I was dancing with my darling to the Tennessee Waltz
When an old friend I happened to see
(I) introduced her to my loved one
And while they were dancing
My friend stole my sweetheart from me

 

I remember the night and the Tennessee Waltz
Now I know just how much I have lost
Yes, I lost my little darling
The night they were playing the beautiful Tennessee Waltz

 

 

 テネシーワルツ
                                   パティ・ペイジ
私は愛しいあの人と、テネシーワルツを踊っていた
そのとき偶然古い友達に出合ったの
私は彼女に、私の恋人を紹介したわ
すると 彼と彼女が一緒に踊っているうちに
私の友達は私の最愛の彼を私から盗んでしまった

 

私は、あの夜とあのテネシーワルツを忘れはしないわ
今、私はどれほど大切なものを失ったのかが本当に解ってきたの
そう、私は可愛い恋人を失ったの
楽団が、美しいテネシーワルツを演奏していたあの夜に…

 

 

 田納西華爾滋
                             佩蒂佩姬
我和愛人共舞著一曲田納西華爾滋
當我看見了一位老朋友
我將她介紹給我的愛人
當他們倆共舞時
我的朋友從我身邊偷走了我的甜心

 

我還記得那一夜和田納西華爾滋
如今我才明白我失去了多少
是的,我失去了我的小愛人
在樂隊演奏著美麗的田納西華爾滋的那一夜

 

 筆者注:

 英語原詞の最後の一句に見える「The night they were playing ・・」の主語「 they 」は「彼と彼女」の意とも解せなくはありませんが、伊賀流文脈判断により、ここではテネシーワルツを演奏していた「楽団の奏者」と解釈して翻訳しておきます。

 

 


TENNESSEE WALTZ(田納西華爾滋)

 

 

 おまけ【パティ・ペイジ80歳ごろのライブ演唱です】↓

Patti Page - Tennessee Waltz

 

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