【映画『ティファニーで朝食を』のオープニング・シーン】

 

 『ムーン・リバー』(Moon River)は、1961年10月5日に公開されたアメリカ映画「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany's)の主題歌となった楽曲です。
 映画の題に見える「ティファニー」は、世界的に有名なアメリカの宝飾店で、朝食を食べるような場所は有りませんでしたが、冒頭の画像のように、この店の前でホリーという名の女主人公が朝食を食べることから名づけられたものです。
 2017年になって、ティファ二―の店内に軽食コーナーが作られたようですが、この映画公開から56年も後の事であり、映画の影響を受けたわけではないでしょう。

 

 蛇足ながら、映画の題名に見える「Tiffany's」とは「Tiffany」の所有格ですので、「Breakfast at Tiffany's」を厳密に訳すと「ティファニーの所有する物件での朝食」ということになります。ティファニーの店内に飲食する場所はありませんので、「物件」とはここではティファニー店外の軒先或いは敷地を意味しています。

 

 この楽曲は、ジョニー・マーサー (Johnny Mercer、1909年11月18日 – 1976年6月25日)の作詞にヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini、1924年4月16日 - 1994年6月14日)が曲を付けたもので、元々は、主演女優のオードリー・ヘプバーン(英国人: Audrey Hepburn、1929年5月4日 - 1993年1月20日)の演ずる主人公ホリーが劇中で歌を歌うシーンのために作られたもので、映画のストーリーとは直接の関係はない楽曲です。

 

 作詞・作曲した二人は、日ごろ敬愛するヘプバーンの為ならと腕によりをかけて作ったことから非常に優れた楽曲が出来上がりました。
 そのため、劇中歌だけでなく映画のオープニングではマンシーニ楽団の器楽演奏、エンディングではそれに混声合唱を加えたものが収録されて、結果的に主題歌となったものです。

 

 ヘプバーンは、それほど歌の上手い女優ではなかったので、他の映画の中で演唱するシーンの殆どはプロの歌手による吹き替えが行われていましたが、「ムーン・リバー」だけは彼女自身余程気に入っていたようで、この映画では珍しく本人が自らギターを爪弾きながら演唱しています。
 その素朴な歌い方が、却ってこの映画に、吹き替えでは得られない現実感を与えています。

 

 ところが、このヘプバーンの演唱シーンは、映画完成後のロサンゼルスでの試写会で、カットされる危機に晒されたことがあります。
 試写会後、パラマウント映画の社長に就任したばかりのマーチン・ラッキンは「この歌は、ストーリーの展開と関係ないからカットしたほうが良い。」と提案しました。その本心は、ヘプバーンの歌が下手であるということだったのかもしれません。

 

 その時のヘプバーンの反応については、同席したマンシーニやその他の人々がほぼ同様に次のような証言をしています。

 

 「その時、オードリーは血相を変えて立ち上がり『 "Over my dead body!" (私の死体を踏み越えてからにしなさい!)』というような意味のことを、もっと下品な言葉で捲くし立てた。」

 

 その剣幕に圧倒された社長が引き下がり、ヘプバーンの劇中歌は、映画封切時から無事日の目を見ることになりました。

 

 この楽曲「ムーンリバー」は、1961年映画公開とほぼ同時にサウンドトラックのLP盤とシングル盤とが発売されて大ヒットとなり、翌年ノミネートされた1961年度のアカデミー歌曲賞とグラミー賞の最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀編曲賞の3部門を受賞しています。
 しかしながら、このレコードの録音は、映画撮影に先行して1960年12月8日に行われていたため器楽演奏版と混声合唱版だけで、映画撮影中に歌ったペプバーン自身の歌唱は入っていません。

 

 歌唱としては、1962年にアンディ・ウィリアムス( Howard Andrew Williams、1927年12月3日 - 2012年9月25日)が彼自身のアルバムに収録して発表したカバー版の方が大ヒットとなって広く世の中に知られています。
 そのアンディ・ウィリアムス自身が後に「この歌には意味がよく分からないところがある」と語っているように、歌詞は非常に抽象的で分かりにくいものです。

 

 作詞したジョニー・マーサーはアメリカ南部のジョージア州サヴァンナの出身ですが、この映画の中で演唱するオードリー演ずる主人公のホリーが南部出身という設定であったことから、自分が生まれ育った南部での少年時代の思い出を歌詞に盛り込んだと生前語っています。

 

 詞題の「ムーンリバー(月の河)」とは、架空の河の名ですが、作詞者のジョニー・マーサーの故郷ジョージア州サヴァンナの自宅の傍を流れる「バックリバー(Back River)」をイメージしたものです。
 後にこの「バックリバー」は、この楽曲のヒットに因んで、河川名称を「ムーンリバー」に変更しています。

 

 この詞では、ムーンリバーを擬人化して、幼馴染の親友と見做して書き上げています。

 

 詞中に見える「ハックルベリー・フレンド」とは、直訳すると「コケモモの友達」ということになりますが、ここではマーク・トゥエインの小説「トム・ソーヤーの冒険」に出てくるトムの親友ハックルベリー・フィンに因んだ慣用句で「冒険心に富む友達」を意味してムーンリバーのことを指しています。なお、ジョニー・マーサーは、子供の頃コケモモの実を摘んで遊んだことを想い出して、この詞語を使うことを思いついたと述べています。

 

 「レインボーズ・エンド(虹の終わり)」も分かりにくい表現ですが、古来欧米では虹の端には宝物があると信じられており、「幸福になる」とか「夢が叶う」とかの意で使われる慣用句です。

 

 今回は、映画「ティファニーで朝食を」の中のペプバーンの原唱でご紹介します。
 動画では、前半がペプバーンのブルース調の演唱で、後半はダンス場面に合わせてチャチャチャ風にアレンジした器楽演奏になっています。

 

 この英語歌詞は甚だ難解なものですので、和訳も漢訳も伊賀流得意の大胆な意訳です。

 

 

 Moon River
 ムーン・リバー
 月亮河

 

Moon river, wider than a mile
I'm crossing you in style some day
Oh, dream maker, you heart breaker
Wherever you're going, I'm going your way

ムーン・リバー、その幅は1マイルよりも広い
いつか私は、あなた(擬人化したムーン・リバーの意)を堂々と渡ってみせる
お~ 私に夢をくれるあなたは、私の心を打ち砕いたりもする
あなたがどこへ行こうとも、私は一緒について行く

月亮河,寬不過一英里
總有一天我會優雅地遇見你
噢! 你是織人之夢者,你亦是碎人之心者
無論你將去何方,我都會追隨著你

 

Two drifters, off to see the world
There's such a lot of world to see
We're after the same rainbow's end, waiting round the bend
My huckleberry friend, Moon River, and me

あなたと私、ふたりの放浪者となって、世界中を見物に出かける
そこにはたくさんの見るべき場所があるから
私たちは同じ虹の末端にある幸福を探し求めている、その幸福は狂おしく待っている
私の幼馴染で冒険心に富む友達、ムーン・リバーと私を

兩個流浪的人想去看看這世界
有如此廣闊的世界讓我們欣賞
我們跟隨同一道彩虹的末端,在那弧線上彼此等候
我那冒險心的旺盛的老朋友,還有月亮河和我

 

(器楽演奏)

 

 


Moon River - Breakfast at Tiffanys

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 西洋情人節(バレンタインズデイ)にあたり、時宜に適した楽曲をあらゆる角度から比較検討した結果、読者各位にふさわしい次の2曲を厳選して贈ります。
 

 

 


222 ここに幸あり ***幸福在這裡字義版

 

 

 ここに幸あり       (幸福在這裡) 
                
 嵐も吹けば 雨も降る      (又是刮強風 又是下大雨)
 女の道よ なぜ険し        (女人的路途為何那麼險惡)
 君を頼りに 私は生きる     (依賴著你 我就能活下去)
 ここに幸あり 青い空       (幸福在這裡 就在那藍天裡)

 

 誰にも言えぬ 爪のあと     (無法向人傾訴)
 心に受けた 恋の鳥       (愛情鳥留予內心的爪痕)
 鳴いて逃れて 彷徨い行けば (哭泣 逃避  徬徨 徘徊)
 夜の巷の 風哀し         (夜裡巷口的風 竟是那麼淒涼) 

 

 命のかぎり 呼びかける     (在有生之年 都要呼喚著你)
 こだまの果てに 待つは誰    (迴響在山谷盡頭 是誰在等待)
 君に寄り添い 明るく仰ぐ    (依偎著你 仰望光明)
 ここに幸あり 白い雲       (幸福在這裡 就在那白雲裡)

 

 

 


數星星

 

  數星星
  空いっぱいのお星さま

 

 滿天都是小星星  閃閃放光明 *1
 好像微笑的眼睛  看著我和妳
 星星數也數不清  代表我的心
 星星閃閃亮晶晶  滿滿的愛都給妳

 一二三四五六七 七六五四三二一
 我的愛和我的心  全都屬於妳
 一二三四五六七 七六五四三二一
 星星如果有聽見  請它告訴妳

 我愛妳*2
 空いっぱいの小さな星が ピカピカ明るく光っているよ
 ほほえむような眼差しで 僕と君とを見ているよ
 数えきれないお星さまが 僕の心を表わしているよ
 お星さまみたいにピカピカきらめく いっぱいの愛は全部君にあげるよ
 一二三四五六七 七六五四三二一
 僕の愛と僕の心は 全部君へのものだよ
 一二三四五六七 七六五四三二一
 お星さまがもしも僕の願いを聞けるのなら 君に伝えてほしいな 
 僕が君を愛してるってことを

 

(*1~*2繰り返し)

 

 一二三四五六七 七六五四三二一
 我的愛和我的心  全都屬於妳
 一二三四五六七 七六五四三二一
 星星如果有聽見  請它告訴妳

 我愛妳 
 
一二三四五六七 七六五四三二一
 僕の愛と僕の心は 全部君へのものだよ
 一二三四五六七 七六五四三二一
 お星さまがもしも僕の願いを聞けるのなら 君に伝えてほしいな 

 僕が君を愛してるってことを

 

 星星如果有聽見  請它告訴妳
 我愛妳
 "一生又三世"
 お星さまがもしも僕の願いを聞けるのなら 君に伝えてほしいな
 僕が君を愛してるってことを

 

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 【伊賀山人庭園に咲いた七つの水仙(3月10日の撮影)】

 

 春告草 (ハルツゲグサ)と言えば、一般に雪解けの時期に咲くユキノハナ(スノードロップ)や早春に開花する梅の花などの総称ですが、伊賀山人庭園で春一番に咲く花は水仙の花です。

 

 そこで本日は水仙の花に因む「七つの水仙(Seven Daffodils:セブン ダフォディルズ)」と題する楽曲をご紹介します。
 この曲は、元々アメリカの歌手ピート・シーガーとリー・ヘイズが中心となって結成し1950年代に活躍したフォークソング・グループ ウィーバーズ(The Weavers)が1957年に発表したものですが、当時はヒットしませんでした。
 1960年に「グリーンフィールズ (Greenfields)」のヒットにより一躍校園民歌(カレッジ フォークソング)の旗手として頭角を現した同じくアメリカのフォークグループ ザ・ブラザース・フォア (The Brothers Four) が、この曲を1964年にカバーしてヒットし、その後、現在も活動を続けているこのグループの代表曲の一つとなっています。
  
 歌詞の内容は、家も土地もお金もない貧しい大学生が恋人に七つの水仙を捧げようと詠ずる恋歌です。

 

 現代の感覚では甚だ貧乏くさく感ずるかもしれませんが、富める国と言われていたアメリカであっても、当時も今も大学生は貧乏なものなのです。
 というのも、修学に必要な学費は、日本のように親が支払うのではなく、学生本人がアルバイトをしたり奨学金を借りたりして賄うのが通常の姿であるからです。

 

 丁度60年前にリー・ヘイズが作詞・作曲した往年のラブソング、今回はブラザース・フォアの演唱でご紹介します。

 

 

 Seven Daffodils
 
七つの水仙
 七個水仙
                    Words and Music: Lee Hays /Fran Moseley
                    作詞・作曲:リー・ヘイズ/フラン・モズリー

 

I may not have mansion, I haven't any land
Not even a paper dollar to crinkle in my hands
But I can show you morning on a thousand hills
And kiss you and give you seven daffodils

僕が豪邸を手に入れることは無理かもしれない、その為の広大な土地も持っていない。
それどころか、両手の中には皺くちゃになった1ドル紙幣一枚すらない。
けれども、千の丘の上の輝く朝を、君に見せることができる。
そして君に口づけし、七つの水仙の花を捧げることもできる。

我得到豪宅的說不定無理,也沒有為此廣大的土地
豈止如此,即使兩手的其中皺巴巴了的1美元紙幣連一張都也沒有     
但是,向你能現出一千山岡上面耀眼地取得的早上
又為你接吻,也能奉獻七個水仙的花

 

I do not have a fortune to buy you pretty things
But I can weave you moonbeams for necklaces and rings
And I can show you morning on a thousand hills
And kiss you and give you seven daffodils

僕は君に素敵なものを買ってあげられる財産を持っていない。
けれども、僕は月の光を織りなして、君の指輪やネックレスにすることができる。
そして、千の丘の上の輝く朝を、君に見せることができる。
そして君に口づけし、七つの水仙の花を捧げることもできる。

我沒有財產被你買極好東西的
但是,我織成月光,能要你的戒指和項鍊
並且,向你能現出一千山岡上面耀眼地取得的早上
又為你接吻,也能奉獻七個水仙的花

 

Oh seven golden daffodils all shining in the sun
To light our way to evening when our day is done
And I will give music and a crust of bread
And a pillow of piny boughs to rest your head
A pillow of piny boughs to rest your head

ああ、七つの黄水仙が太陽に輝いている。
僕達の逢瀬の後、夕暮れの帰り道を照らすように…
そして、僕は音楽と一かけらのパンとを捧げよう。
更に、君の頭を安らげるために香りのよい松の枝の枕を捧げよう。
君の頭を安らげるために香りのよい松の枝の枕を…

啊,七個丁香水仙被太陽照射閃耀著
我們的相會之後,為使照黃昏的歸途
並且,我向你獻上音樂和一小片的麵包
並且,奉獻用睡眠向附有時你,頭能安樂的香味兒好的小樹枝編織的枕頭
用睡眠向附有時你,頭能安樂的香味兒好的小樹枝編織的枕頭…

 

 


SEVEN DAFFODILS by The Brothers Four

 

 

   七水仙詞
            伊賀山人作七言詞平水韻上聲晧

 一二三四五六七
 今年花似去年好
 可憐水仙如寶貝
 遙想南海美麗島 

 

 


Seven Daffodils - Brothers Four

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